荒粉こんにゃく製造工程中の「のり」調製時における放置熟成温度が荒粉こんにゃくの力学的性質に及ぼす影響を検討し,次のような結果を得た. (1) 干しイモ荒粉によるこんにゃくの破断応力,破断エネルギー,初期弾性率は「のり」放置温度90℃で低下した.精粉こんにゃくでは「のり」放置温度の影響は極めて微小であった. (2) 「のり」放置温度90℃の影響は荒粉の粒径により異なった.42-100 mesh試料で製造したこんにゃくでは,試料粒子が小さいほど放置温度の影響を受け,力学物性値は低下した.とくに83-100 meshの小粒子で顕著な低下が認められた.200-330 meshの微粒子粉ではこんにゃく製造は不可能であった. (3) 42-60 meshの大粒子に微粒子を3割配合して製造したこんにゃくでは,「のり」90℃放置により,応力-歪曲線,クリープコンプラインス曲線は35℃の場合と比べて顕著に相違することが示された. (4) 42-60 mesh「のり」が高粘性であったのに対し,200-330 meshの微粒子「のり」は低粘性を示した.また,昇温に伴う粘性変化にも明らかな相違が認められた.200-330 mesh「のり」の粘度上昇は80℃で認められ,90℃, 1時間保持によっても粘性の増減はなかった. (5) 干しイモ荒粉こんにゃくの「のり」放置(90℃)による物性変化は,荒粉に含まれる200-330 meshの微粒子成分の影響によって生じ,この微粒子は飛粉に相当することが示唆された.