FT-IR/ATR法による溶質量既知のマルトオリゴ糖(G1-G7)の重合度の推定について検討した結果,以下の結果を得た. (1) マルトオリゴ糖スペクトルの特徴として,指紋領域におけるG5-G7のスペクトルパターンが類似する傾向が認められた.さらに,スペクトルのピークの吸光度と重合度との間には,線形関係が認められなかった. (2) PLS-1によりマルトオリゴ糖の重合度推定を行ったところ相関係数0.999の良好な結果が得られた. (3) 吸収ピークの詳細を把握するため波形分離処理を行い,各分離波の帰属を文献より明らかにした.そして,各分離波の吸光度と重合度の関係より,重合の様子がより反映されている分離波を選定した. (4) 選定した分離波のピーク波数におけるスペクトルの吸光度,また,これらの分離波の影響が強いスペクトルの吸収ピークの吸光度を用いて重回帰分析を行ったところ,両方の場合とも,相関係数0.99以上の良好な結果を得た.さらに,溶質0.1gの場合においても,相関係数0.99以上の高い再現性が得られた.T-IR/ATR法により溶質量既知である単一成分のマルトオリゴ糖水溶液であれば,重合度の推定が十分可能であることが示された.