共に牛乳の熱履歴の指標となり得ることが報告されているXTT法とフェリシアナイド還元法の特性の違いを明らかにするために,異なる加熱処理を施された牛乳のXTT還元性とPRSを測定し,結果の比較を行った.その結果,加熱温度に対する両指標の挙動は酷似していることが判明した.しかし,牛乳,及び脱脂粉乳の貯蔵期間,貯蔵温度に対する挙動は全く異なっており,XTT法が貯蔵日数,貯蔵温度を鋭敏に反映したのに対して,フェリシアナイド還元法で測定したPRSには貯蔵期間中ほとんど値の変動が認められなかった.これは,XTT還元物質であるアミノレダクトンが酸化を受けて減少するのに対して,フェリシアナイドの還元に寄与する物質は酸化を受けにくい比較的安定な物質であることに起因していると考えられた.また,アミノレダクトンはフェリシアナイドの還元には寄与しておらず,XTT法とフェリシアナイド還元法は異なる物質の還元力に基づく熱履歴評価法であることが明示された.今回の結果より,測定操作がフェリシアナイド還元法よりも簡易・迅速であり,なおかつ加熱殺菌温度だけでなく貯蔵条件の指標にもなりえるXTT法は牛乳の品質評価法として実用的に利用できる,有用な方法であると考えられた.