cis型不飽和脂肪酸からなる乳化剤は,飽和脂肪酸エステルと同様に澱粉と複合体を形成することが判明した.乳化剤と澱粉の複合体形成能は,乳化剤を構成する脂肪酸の構造が重要でなく,水溶液における乳化剤の分散状態が重要な因子であると考えられた. (1) ジグリセリン脂肪酸エステル(DG-C18:0,DG-C18:1,DG-C18:2)およびトリグリセリン脂肪酸エステル(TG-C18:0,TG-C18:1,TG-C18:2)は,いずれの乳化剤分散液の調製法においてもアミロースおよび澱粉とよく複合体を形成した. (2) MG-C18:0は,60°Cではアミロースおよび澱粉とよく複合体を形成したが,30°Cではその分散液の調製法によって複合体形成能が異なった. (3) MG-C18:1,MG-C18:2は,その乳化剤分散液の調製法によって,アミロースおよび澱粉との複合体形成能が大きく異なった. (4) DSC,TG/DTA,IRのデーターからMG-C18:1がMG-C18:0と同様にアミロースと複合体を形成することが示唆された. (5) アミログラフにおいて,多価アルコール脂肪酸エステルは馬鈴薯澱粉の糊化温度を上昇させ複合体形成を示唆した.