好呈味エキスを製造するために擬似移動層式クロマト分離装置を活用した処理を行い,従来のものとの比較検討を行った. それぞれの成分を比較すると,水分,粗蛋白質,脂質および灰分の一般成分含有量には大きな違いは見られなかったが,塩分の含有量は2倍に増加した. 粗蛋白質の含有量は同程度であったが,その構成成分である遊離アミノ酸は,従来のものに比べ約5分の1に減少し,逆にペプチドは約1.5倍に増加した.また,核酸は,IMPとGMPのどちらも約1.5倍に増加し,これらの変化は呈味性の改善に大きな影響を持つ. 官能試験により甘味,うま味そして塩味がかなり増加したことがわかり,今回開発したビール酵母エキスが従来のものに比べ非常に美味しいという評価を得た. 本研究における擬似移動層式クロマト分離装置を用いた処理は,従来のエキスから無味の成分や苦味の成分を取り除き,さらに呈味性を向上させる成分であるペプチドや核酸を増加させるという,おいしさの濃縮作用を起こした.今後,擬似移動層式クロマト分離装置はビール酵母エキスの新製造法として活用することができると考えられる.