熱重量分析(TG)による,自動酸化油および高温加熱こめ油(米菓製造用揚げ油)の劣化判定の可能性について検討した. (1) 30℃で自動酸化油を調製し,経日的に分取しPOV, COV, AVそして色差(ΔE)を測定し,190~290℃におけるTG曲線の特徴的な重量減少比とPOV, COVが0.95以上の高い相関を示し,TGによる自動酸化油の劣化判定の可能性が示唆された. (2) 自動酸化油を未劣化油脂各分,劣化油脂画分とに分画し,それぞれのTG曲線を比較すると,油脂劣化が進んだ画分は,重量減少が低温域でおこることがマクロ的なTG挙動で認められた.したがって,TG曲線を比較し,重量減少がより低温でおこる場合には,劣化が進んでいると推測できるものと思われた. (3) 高温加熱油においては,その高温加熱温度より高温側でのTG曲線を比較したところ,そのTG曲線の1%重量減少時点温度がCOV, AV,ΔEのそれぞれと0.91以上の強い相関を示した.このように高温加熱油の場合でも,TGによる油脂の劣化判定の可能性が示唆された.