豆腐製造時の豆乳にMTGaseを作用させて調製したレトルト無処理豆腐とレトルト処理豆腐の物性の変化を調べ以下の結果を得た. (1)G-L結合量の増加はGDLの場合,MTGase添加量に伴って増加したのに対し,硫酸カルシウムではMTGase5u/gP以上で一定となった. (2)無処理Ca豆腐,GDL豆腐ともにMTGaseの添加により,破断強度,歪は増加し,2-5u/gP以上で一定となった.クリープ特性値はMTGase添加に伴って変化した.Ca豆腐の場合EH,EV,ηV,ηNはいずれも増加,GDL豆腐では各パラメータともあまり変化がみられなかった. (3)レトルト前後でのMTGaseの豆腐物性に与える影響はG-L結合量とクリープ特性値の関係により明確に表現できた.即ち,レトルト処理によりEH,EV,ηVが増加,ηNは低下することが顕著であり,MTGaseによるG-L結合量が多いほどレトルト前後での各弾性率,粘性率の差がなくなった. (5)電気泳動バンドにおいて,MTGase5u/gP以上で顕著に架橋高分子が認められた. 参考までにレトルト処理における豆腐の保水性(離水)の変化を把握するため,豆腐の重量変化(レトルト処理前に対するレトルト処理後の重量百分率)を調べた結果では,MTGase濃度が高くなるに従ってレトルト前後での重量変化は小さく歩留まりは向上した.例えば,MTGase無添加豆腐の重量百分率約60%に対して,10u/gP添加豆腐では85%以上を示した.