(1) 素麺粉末糊を10℃に放置したとき,厄前の試料の平衡粘度およびチキソトロピー性は,時間経過とともに急速に増加し,その後減少した。厄後の試料は,時間経過に伴う平衡粘度およびチキソトロピー性の増加割合が厄前のものに比べて少なかった。 (2) 厄前と厄後の麺粉末糊にみられた特性の相違は,麺粉末から大部分の脂質を除去すると小さくなり,いずれも無処理の厄前の特性に近くなった。 (3) 厄前と厄後の脂質の交換により,それぞれの糊の特性が入れ替わった。 (4) 厄後の脂質の酸価の上昇分に相当するオレイン酸を厄前の麺粉末に添加して調製した糊は,厄後の試料とほとんど同じ特性を示した。 (5) モデル系としての,素麺の脂質を含む小麦デンプン糊では,麺粉末糊における結果が再現されたわけではないが,厄前と厄後の脂質の相違による影響が明瞭に認められた。素麺の水可溶物質を脂質とともに添加すると,デンプン糊の特性は麺粉末糊の特性に近づき,厄前と厄後の麺粉末糊の相違が再現された。 (6) 以上の結果から,厄前と厄後の麺粉末糊のレオロジー特性の相違は脂質の変化によるものであって,厄処理によって生じた遊離脂肪酸のデンプンに対する作用が原因であると推論された。