筋肉蛋白質ミオシンBと大豆蛋白質CIFが共存する系の加熱ゲル形成能に及ぼすCa2+とMg2+添加の影響を5種類のゲル形成至適条件で検討した結果, 次のことが明らかとなった。 1) 100℃以下の温度域での加熱は, Ca2+, Mg2+の存在によりレオロジー的に不規則なネットワークを構成していると思われる脆いゲルを形成した。一般に, Ca2+添加ゲルはCa2+濃度増加に伴い, 強固なものとなり, Mg2+添加ゲルではそれ程顕著な差異は認められなかった。 2) 135℃加熱 (高温加熱) によりCa2+添加ゲルはより強固で, そして脆いものであったが, 3段加熱においては, 更にその傾向は強くMg2+添加のゲルにおいてもそれが認められた。 3) EDTAを添加した加熱ゲルは, 100℃以下と高温加熱とではレオロジー的に異なる挙動を示した。すなわち, EDTA添加は100℃以下ではゲル形成能を促進し, 高温加熱では抑制した。このことは両加熱条件が全く異ったゲル形成過程をたどることを意味し, 特に高温加熱においては蛋白質間に架橋の役目を果す金属イオンが必要であることを示すものであり, 又, 100℃以下の加熱条件ではそれはむしろゲルネットワークの不規則性を誘発する原因となることが示唆された。