台湾産のバナナ,仙人蕉を0.5°~2℃および4°~8℃に5, 10, 15日間貯蔵し,出庫後3000ppmのエチレン処理による追熟加工を行ない,低温障害の発生に伴う生理化学的変化と果実の品質を調べた。また中米産のGrosMichelを3°~5℃に貯蔵し,貯蔵中のアスコルビン酸含量の変化を調べた。 (1) 0.5°~2℃貯蔵区は1日目に,4°~8℃貯蔵区は4日目に果皮に低温障害の病徴を生じ,障害の発生に伴って果皮の明度が減少する。0.5°~2℃に貯蔵した果実は貯蔵日数の経過とともに果皮の褐変が著しくなる。 (2) 低温障害果は出庫後追熟処理を行なっても正常な呼吸のパターンを示さず,ことに長期間低温に貯蔵した果実では呼吸の異常がはなはだしい。また追熟後炭疸病菌の侵害を受けやすくなり品質が劣化する。 (3) 健全果では追熟に伴って果皮のクロロフィルはほとんど消失するが,長期間低温に遭遇した果実では追熟処理を行なっても果皮のクロロフィルが完全に消失しない。 (4) 4°~8℃に5~10日間貯蔵した果実でも,高濃度のエチレンによって追熟処理すれば,果皮の褐変による商品性の低下はみられるが,澱粉の加リン酸,加水分解による糖の増加がみられ,果肉の硬化は起こらず食用に供しうる。 (5) 低温障害果実ではアスコルビン酸含量の減少がみられ,ことに果皮でこの傾向が著しい。