(1) 低温障害の進展に伴って緑熟果,黄熟果の果皮,果肉両組織ともO2吸収量が激減し,RQが増大する。 (2) 緑熟果,黄熟果の果皮,果肉組織のO2吸収に対してみられるマロン酸の抑制効果が,低温障害果ではみられなくなる。また緑熟健全果でみられるDNPの添加効果が低温障害果ではみられなくなる。 (3) 低温障害果ではCO2排出量に対するピルビン酸の添加効果が増大し,緑熟,黄熟果の果皮,果肉ともアセトアルデヒド,アルコール含量が増大する。 (4) アセトアルデヒドはバナナ組織の脱水素酵素の活性を抑制する。 (5) 低温障害果の果皮および果肉組織のカタラーゼ活性は健全果に比べていづれの熟度でも大きい。 (6) バナナ果皮の褐変関連物質としてチロシンおよびdopaが認められ,両者とも低温障害果の果皮に含量が多い。 以上のようなことからバナナ果実が低温に遭遇すると低温耐性の弱いある種の酵素系の活性が低下し,その結果正常な呼吸系路が阻害され,中間代謝産物を生じ,これらがさらに呼吸系に影響を与え,カタラーゼ,ポリフェノールオキシダーゼが活性化し褐変基質の多い果皮組織で褐変化が起こるものと推論した。