種々の条件下でEAとAAの酸化速度をポーラログラフ法により比較検討してつぎのごとき結果を得た。 (1) EA, AAの安定度に対する金属塩の影響について検討したところ,硫酸第二鉄は両酸の酸化を著しく促進するが,その程度はEAよりAAのほうが多少大であった。しかし硫酸第一鉄,マンガン,塩化ナトリウムはAAに対しては酸化抑制効果を示したが,EAに対してはなんら効果は認められなかった。 (2) 糖類ならびにアルカリに対するEA, AAの酸化速度間には大きな差異はみられなかった。なおアミノ酸のうちではグルタミン酸,シスチン,メチオニンはAAの酸化を抑制したが,EAはすみやかに酸化されその効果がみられなかった。この酸化のすみやかな原因はアミノ酸を溶解するために用いた塩酸によるためと思われた。 (3) EAとAAとの安定性には酸類の影響が大きく,いずれの酸に対してもEAはAAより安定度が低く,酸の種類およびその濃度によりまた貯蔵温度により両者の酸化速度に大きな差異のあることを認めた。 (4) EAはpH 2.2以下ではきわめて不安定で,AAはpH 3付近において安定であり,pH 4付近では不安定となる。EAは4~5付近においてのみAAより安定度はやや高かった。このようにEA, AAの酸化速度はpHにより大きく影響されるように思われた。 (5) pH 2.2のMcIlvaine緩衝液を用いて溶存酸素存在下における自動酸化曲線を測定し,AAに比してEAの酸化がすみやかであることを明らかにした。