味覚センサーを用いて,茶葉の渋味およびうま味を客観的に評価できることが知られているが,これまでの研究では同一条件で浸出した茶で評価されており,浸出条件による味の違いや,水出し緑茶の評価は行われていない.そこで,浸出条件が異なる緑茶を用いて,味覚センサーによる渋味およびうま味の評価値の妥当性を検討した.同一茶葉を,浸出温度および時間を変えて浸出した緑茶の味覚センサーによる「渋味推定値」および「うま味推定値」は,それぞれの味と関係が深いガレート型カテキンおよび総アミノ酸濃度と相関が認められた.また,主に高級茶について,異なる茶種および浸出条件の緑茶についても,渋味推定値は同様の結果が得られた.うま味推定値については,アミノ酸量の少ない下級茶を用いた場合,低温浸出時にアミノ酸濃度とうま味推定値との相関が低下する可能性があるが,アミノ酸量の多い高級茶を使用した場合は,総アミノ酸濃度との相関が認められた.官能検査の結果では,浸出条件が異なっていても,渋味推定値と官能評価値(渋味)との間に高い相関が認められた.うま味については,特に渋味の強い緑茶を除いて,うま味推定値と官能評価値(うま味)との間に高い相関が認められた.以上のことから,味覚センサーは,特に高級茶において,茶種に適した浸出方法の検討や,水出し緑茶のような低温浸出を含む緑茶の評価に利用可能と考えられた.