鳴門(北泊,北灘,丸山,里浦,鳴門町,和田島,福村)・三陸(普代,小友浦浜,広田),韓国(高興,明川,薬山)および中国(正明寺,柏嵐子)で収穫された素性の確かな湯通し塩蔵ワカメ(210試料)について,既報の炭素・窒素同位体比分析の結果と9元素組成(Mg・P・Ca・V・Mn・Zn・Rb・Sr・Ba)を組み合わせることにより,産地判別の正確さの向上を検証した.9元素の組成を比較した結果,中国産については他の地域よりもとくにMg・Ba・Mn・V・Znの濃度が高く,特徴的な傾向が得られた.特徴の得られた5元素濃度(Mg・Ba・Mn・V・Zn)と炭素・窒素同位体比の結果を用いて,鳴門・三陸・中国・韓国の4群について正準判別分析を行った.炭素ステップワイズ法によって,窒素同位体比と4元素濃度(Mg・Ba・Mn・V)が選択され,鳴門産と中国産について特徴が見られ,判別率は,鳴門産は100% (64点中),中国産は94.4%となった.しかし,三陸産と韓国産の特徴は類似し,判別率は80%前後となった.以上より,安定同位体比と微量元素組成を組み合わせることで,湯通し塩蔵ワカメの産地判別の正確さが向上した.