ドライフルーツの製造にける一般的な方法である熱風乾燥は,果実表層部が早く乾燥・硬化し,内部は乾燥しにくいため,乾燥時間の長さ,製品水分の不均一性および食感の悪化が問題となる場合が多い.さらに,ポリフェノールの酸化等による褐変も製品の品質を落とす要因である.ニホンナシの果実片にマイクロ波を照射した後で熱風乾燥を行えば,前処理を行わない場合と比較し約2/3の時間で乾燥が終了し,色彩が鮮やかで褐変がなく,水分や硬さが均一なセミドライフルーツが得られることがわかった.以上の効果が得られるために必要なマイクロ波処理時間は,果実片の処理重量に比例するとともに,電子レンジ出力に反比例した.40°Cから70°Cの熱風乾燥温度でセミドライフルーツの作製が可能であり,温度が高いほど濃い色調を呈した.消費者による官能検査を実施したところ,マイクロ波処理を行ったニホンナシのセミドライフルーツは,無処理のものより外観,味,食感および総合評価において好ましいと判断された.以上より,マイクロ波による前処理と熱風乾燥により製造されたニホンナシのセミドライフルーツは,高品質な果実加工品として,今後の普及が期待される.