産地の異なるカカオ豆を用いたチョコレート6種(コントロールのアクラを除く)について分析型官能評価と嗜好型官能評価,機器分析測定を行いチョコレートのおいしさについて検討した結果,次のような知見が得られた. (1)分析型官能評価では分散分析の結果「甘味」以外の10項目について試料間に有意差が見られた( p <0.05).TukeyのHSD検定の結果,カレネロとアリバは「スパイシーな香り」がスラヴェシ,ジャワファンシー,サンチェスに比べて弱く( p <0.05),「華やかな香り」がスラヴェシに比べて強く( p <0.05),「スモーキーな香り」がスラヴェシとサンチェスに比べて弱く( p <0.05),「酸味」,「苦味」,「渋味」がジャワファンシー,サンチェス,スラヴェシの3試料に比べて弱い( p <0.05)という特性が示された. (2)嗜好型官能評価では分散分析の結果「かたさ」と「口どけ」の項目以外の11項目において有意差が見られた( p <0.05).アリバは色調を除く全ての項目において最も評点が高く,TukeyのHSD検定の結果アリバとカレネロは全項目においてサンチェス,スラヴェシの2種の試料に比べて評点が有意に高かった( p <0.05). (3)分析型および嗜好型官能評価の結果,嗜好性の高いチョコレートは「華やかな香り」があり「スパイシーな香り」,「スモーキーな香り」,「酸味」,「苦味」,「渋味」が強くないという官能特性を示すことが示唆された. (4)分析型官能評価と機器分析値との相関係数はpHと酸味では r =-0.69( p <0.05),pHと苦味では r =-0.62( p <0.05)であった.ポリフェノール量と酸味では r =0.89( p <0.01),ポリフェノール量と苦味では r =0.87( p <0.01),ポリフェノール量と渋味では r =0.77( p <0.05)であった.