リステリア属菌の簡易迅速な同定および疫学的な解析手法の確立を目的として, Listeria monocytogenes およびその他の Listeria spp.の保有する iap 遺伝子を標的とした Listeria spp.共通, L.monocytogenes および L .innocua 特異的な3種類のPCR法とそのPCR-RFLP法による遺伝子型別の有効性を, L.ivanovii を除く患者, 食品, およびネズミ由来Listeria spp.181株により評価した.その結果, Listeria spp.共通PCRは, L.grayi を除いた供試 Listeria spp.178株に増幅が認められ, L.monocytogenes および L.innocua 特異的PCR法は, 各菌種に特異的な増幅を示したことから, 属および菌種同定に有効な方法と考えられた.一方, PCR-RFLP法により, L.monocytogenes は血清型4b, 1/2bおよび1/2a, 1/2cに関連した5種類のRFLPパターンが認められ, L.innocua, L.seeligeri , および L.welshimeri も特異的パターンを示した.以上の結果, これらのPCR手法は, リステリア属菌種の遺伝学的な同定 (推定) と系統学的な遺伝子型別手法として有効と考えられた.