ボツリヌス菌の分子疫学解析手法として, RAPD法, 神経毒素複合体遺伝子を標的としたPCR法およびPCRRFLP法の有用性について検討した.試験菌株として, 食餌性ボツリヌス症由来株, 日本および米国の乳児ボツリヌス症由来株, 蜂蜜由来株など23株を用いた.RAPD法は, 日本の乳児株および蜂蜜由来804-1H株と他の菌株を明瞭に識別した.一方, 神経毒素 (BoNT/A, BoNT/B), 無毒成分 (nontoxic-nonhemagglutinin (NTNH), hemagglutinin (HA)), およびp47蛋白質の遺伝子解析の結果, 供試A型菌は3つの遺伝子型に分けられた.このうち, 日本乳児株, 蜂蜜由来804-1H株およびAF84株は共通のBoNT/AおよびNTNH切断パターンを示し, かつHA遺伝子陰性, P47遺伝子陽性でその他の株と異なった.これらの結果から, 今回検討したPCR法に基づいた解析法は, A型毒素産生ボツリヌス菌の簡易で迅速な遺伝子型鑑別法として有用と考えられた.