1998年1~6月の半年間, 兵庫県の1スーパーマーケットで市販されていた鶏肉 (100検体) と豚肉 (80検体) について, 黄色ブドウ球菌の汚染状況を調査し, 分離菌株についてPFGEを用いて疫学解析を行った.またエンテロトキシン型別とコアグラーゼ型別も行った. 1. 菌検出率は鶏肉70検体 (70%), 豚肉29検体 (36.3%) で, 鶏肉が高率に黄色ブドウ球菌に汚染されていた. 2. PFGEによる疫学解析では, 鶏肉70株は15パターン (A~O) に, 豚肉29株は3パターン (A, P, Q) に分けられ, 特に鶏肉は多様な遺伝子型をもつ黄色ブドウ球菌で汚染されていることがわかった.また, 興味深い所見は, 同一店舗内で販売されていた鶏肉 (18検体) と豚肉 (24検体) のかなりの検体がともに同じ遺伝子型の菌 (パターンA) によって汚染されていたこと, さらにこのパターンA菌は調査期間中, 鶏肉と豚肉から繰り返し検出されていたことであった. 3. エンテロトキシン産生率は鶏肉で11.4% (A型5株, B型1株, C型2株), 豚肉で13.8% (すべてB型) であった. 4. コアグラーゼ型別率は鶏肉で90% (63/70株), 豚肉で93.1% (27/29株) であり, その主要なコアグラーゼ型は前者がII型 (25株) とV型 (21株) で, 後者がV型 (21株) であった.