アリルカラシ油を精油主成分とするカラシ抽出物の Yersinia enterocolitica および Listeria monocytogenes の2種類の低温細菌に対する抗菌効果を調べた.異なる濃度のアリルカラシ油の蒸気存在下の密閉容器内で菌を培養し, アリルカラシ油の蒸気の最小発育阻止濃度 (MIC) を調べた.さらに, 両菌の対数増殖期および死滅期の菌を加熱損傷した菌のMICも併せて調べた. その結果, カラシ抽出物によるエルシニアのMICは, 10℃ では14ppm, 20℃ では45ppm, 30℃ では68ppm, 40℃ でのMICは36ppmであった.またリステリアでは, 10℃ でのMICは14ppm, 20℃ では71ppm, 30℃ では98ppm, 40℃ では145ppmであった.両菌とも10℃ でのAITのMICが低く, 低温環境での抗菌効果が大きいことが証明された. 一方, 損傷菌については, エルシニアの対数増殖期のMICは30℃ で20ppm, 死滅期のMICは30℃ で20ppm, リステリアの対数増殖期のMICは30℃ で43ppm, 死滅期のMICは30℃ で68ppmであった.AITの抗菌効果は損傷菌に対する方が損傷していない菌より大きいことが実験で証明された.