われわれは,ノロウイルス (NoV) 遺伝子グループI (GI)および遺伝子グループII (GII)の同時遺伝子増幅を行い,クエンチャーによる蛍光消光現象を利用して,1本のチューブでNoV GIおよびGIIを迅速かつ簡便に検出・識別するDuplex RT-LAMP法を確立した.本法は,RT-LAMP反応後に電気泳動あるいはハイブリダイゼーションなどの追加操作を必要とせず,増幅に使用した蛍光標識プライマーと相補配列を有するクエンチャー標識オリゴヌクレオチドを反応チューブに加えるのみで,紫外線を反応チューブに照射した際の蛍光色から増幅された遺伝子を視覚的に検出・識別可能である.RT-PCR法でNoV陽性の糞便70検体を用いてDuplex RT-LAMP法を検証したところ,1反応チューブ当たりの遺伝子コピー数が103から104以上でそれぞれNoV GIは赤色,GIIは緑色,GIおよびGII混合は一部が混色の黄色の陽性反応を示し,その有用性が確認された.本法は,NoV食中毒または感染症発生時に,糞便検体からのNoV GIおよびGII遺伝子の迅速検出および遺伝子グループのスクリーニング試験法として,多くの検査機関での利用が期待される.さらに,われわれの開発したクエンチャー標識オリゴヌクレオチドによる蛍光消光現象は,すべての遺伝子増幅法に応用可能であり,幅広い分野への応用が期待される.