韓国の固有樹種で絶滅が危惧されているサイシウモミ(Abieskoreana)の天然更新にとって重要な種子の発芽特性を調べるため,発芽に対する低温湿層,温度,乾燥の影響について検討し,天然更新が比較的容易とされるトドマツ(Abies sachalinensis)と比較した。2樹種の種子は30~150日低温湿層処理によって発芽速度,発芽率が上昇した。150日間の低温湿層処理では,10~30°Cの各温度条件における最終発芽率は,無処理種子に比べ,サイシウモミで1.7~8.5倍(42.9~87.8%),トドマツで2.1~9.2倍(72.1~89.8%)まで増加した。しかし,サイシウモミの発芽速度はトドマツに比べ遅く,最終発芽率に達するのに各発芽温度で40日前後を要した。低温湿層処理後の発芽率の増加率は処理日数と温度によって異なっていた。低温湿層処理は,低温での発芽率を著しく増大させたが,サイシウモミではトドマツより長期間の低温湿層処理が必要であった。低温湿層処理後6日間までの無給水処理は発芽率に影響しなかった。しかし,PEG(Polyethylene glycol)6000溶液による乾燥処理によってサイシウモミの発芽率は有意に低下し,-0.4MPaでも無処理種子の50%まで低下した。一方,トドマツでは-0.8MPaでも無処理種子の80%を維持した。サイシウモミ種子はトドマツ種子に比べ,乾燥ストレスに影響されやすいが,発芽期間がトドマツより長く,晩霜害などによる被害を回避しやすいと推察された。