N c値が1.0未満の層を風化花崗岩斜面の表層崩壊すべり面深さに見出し,これを脆弱層と名付けた。表層崩壊現象を理解する鍵になるであろうこの層について,さまざまな土質試験を行った。脆弱層の飽和土の内部摩擦角は11~14°だった。この低角度はせん断試験に先立つ飽和に際してコラプス沈下と呼ばれる構造破壊が起こった結果だと考えられた。吸水過程にある脆弱層の土は飽和に達した時点で急激に沈下した。脆弱層の構造は,空隙率が上下の土層と比較して格段に高いだけではなく,0.85~2.0mmの粗砂の容積率が高く,2.0~4.75mmの空隙の容積率がそれよりさらに高い特性をもっていた。そのため脆弱層の骨格を作る粗砂は容易に空隙中へ転がり込める。飽和化に伴ってそのような粒子の転がり込みが生じることを顕微鏡下で観察した。この現象は,結果的に総体積を減少させコラプス沈下となる。斜面に潜在する脆弱層で起こるコラプス沈下は表層崩壊現象に重要な役割を果たしている。