平成23年1月の新燃岳噴火から1年後の霧島山系におけるアカマツの枯死状況を明らかにするため, 84カ所の調査地点を設置してその枯死率を調査した。また調査地点とその近傍のアカマツ枯死木117個体の周辺における火山灰の堆積深を記録し, それらの枯死木からマツノザイセンチュウの検出を試みた。調査地点の多くは枯死率20%以下で堆積深は20 cm未満であったが, 降灰方向にあたる登山道3地点での堆積深は25 cm以上で枯死率は60∼100%に達した。また, 登山道沿いのどの枯死木からもマツノザイセンチュウは検出されなかった。マツノザイセンチュウが検出された枯死木86個体は, 概ね標高950 m以下に分布し, 火山灰の堆積は浅かった。以上の結果は, 大量の火山灰の堆積がマツ材線虫病とは無関係にアカマツの枯死をもたらすことを示唆する。ただし, 火山灰の堆積被害を受けたアカマツ林の周辺に, マツ材線虫病によって枯死したアカマツ枯死木が分布していた。このことから, 被害を受けたアカマツ林の天然更新による植生回復に向けて, 被害地周辺に残存するアカマツからの種子散布を確保するためマツ材線虫病への適切な対応が急務であると指摘した。