ナラタケモドキはサクラ類の根株腐朽病菌として近年問題となっている。そこで, 被害林から分離されたナラタケモドキとワタゲナラタケを用いてサクラ苗への接種試験を行った。ナラタケモドキ接種苗4本のうち1本が接種4年後に枯死した。それらすべての接種苗の根系に菌糸束は認められなかったが, 根株の外樹皮, 内樹皮および形成層に菌糸膜が形成され, 枯死苗では地際部の形成層を取り巻いていた。一方, ワタゲナラタケ接種苗は4本すべて枯死しなかった。それらすべての接種苗の根系に多数の菌糸束が絡み付いていたが, 菌糸膜の形成は外樹皮の一部に限られ, 内樹皮と形成層での菌糸膜形成は接種苗1本の細い根数本のみに認められた。接種苗からはそれぞれの接種菌が再分離された。対照苗3本はすべて枯死せず, 菌糸膜や菌糸束の形成も認められなかった。これらの結果から, ナラタケモドキはサクラ苗の内樹皮と形成層に侵入し, さらに枯死させることが明らかになった。