スギ人工林の林況および立地環境の違いが流出特性に与える影響を明らかにすることを目的に, 第三紀凝灰岩を地質とする3小流域 (秋田県長坂試験地: 上の沢・中の沢・下の沢) において, 3水年の流量観測と林況および土壌調査を実施した。各小流域は, スギの植栽後およそ40年を経過した林分で, それらの成長や立木密度, 他樹種との混交度合いなどが異なっており, 流域全体の被覆度に差が生じていた。各小流域の年間損失量は724 mm (上の沢), 861 mm (中の沢), 548 mm (下の沢) であり, 流域間で大きく異なっていた。この違いの一部分は, 各流域における蒸発散量の違いによって生じていると考えられた。また, 中の沢流域で観測された年間損失量は, ハモン式から想定される可能蒸発散量 (640 mm) を大きく上回り, 同流域では深部浸透が生じている可能性が示唆された。土壌調査から求めた各流域の保水容量は104 mm (上の沢), 132 mm (中の沢), 121 mm (下の沢) であり, これらの保水容量の大きさは流出解析から求めた各流域の貯留量の大小関係と一致した。また各流域の流況曲線の形状は, 主に蒸発散量や保水容量の違いを反映していると考えられた。