クロマツのさし木による高品質で廉価なマツ材線虫病抵抗性苗の生産方式を確立するため, 抵抗性品種の実生苗を採穂台木として, 密閉ざし (ビニールハウス内および露地) とミストざしの生産性を比較した。その結果, 密閉ざしでは発根率が急激に上昇したため, 梅雨までに根系が十分発達して床替え活着率が高くなる傾向がみられた。また梅雨に床替えしたさし木苗は, 翌春に床替えした同齢のさし木苗より大きく成長することが明らかとなり, 育苗期間が1年短縮された。しかし, 露地での密閉ざしでは, 6月以降に発根率が上昇せず, 高温による障害を受けたと考えられた。また, 抵抗性規格苗1万本を生産するのに必要な経費を試算した結果, ビニールハウス内で密閉ざしを行い, 梅雨に床替えを行う生産方式が経済的に優れ, 現行の接種検定つき実生苗生産方式に比べ約10%の経費を削減できることが示された。