実測した土壌の K -θ関係を用いたBuckingham-Darcy 式を森林斜面の上部と下部地点の下層土壌 (深さ90 cm) に適用し, 算出された鉛直下方への土壌水の年間フラックス, および降雨イベント時の土壌水のフラックスを, 対象流域の降水量や流出水量との比較によって検証した。測定された土壌水の年フラックスは上部地点が530 mm, 下部地点が982 mmであった。これらは, 同期間の試験流域の年降水量 (1,282 mm) より少なく, また, 年流出水量 (643 mm) よりも上部地点で小さく, 逆に下部地点では大きい値であり, 異なる斜面位置の特徴を反映した根系以深の不飽和土壌中の水フラックスとして概ね妥当であると推察された。本手法により, 降雨イベント時の土壌水のフラックスの詳細な解析が可能となり, 降雨イベント時の土壌水のフラックスの解析から, 上部地点よりも相対的に土壌が湿潤な下部地点では, 土壌中に浸透した雨水の多くを速やかに下層土壌から排水していることが示唆された。