林床での落葉移動距離を推定するため, 冬期の落葉広葉樹林において落葉の模型を用いた現地実験を行い, 模型の移動速度を予測する2モデルを作成した。重回帰分析より得られた統計的モデルでは, 説明変量として高さ1 mの風速の傾斜方向成分, 林床植生の被度, 斜面傾斜の3変量が採択された。経験的モデルは, 落葉移動プロセスに関する考察をもとに, 同じ変量をもつモデルを作成した。AICの比較から, これら2モデルでは経験的モデルの方が優れていると考えられた。さらに, 9樹種の落葉と模型の移動速度を比較したところ, 模型に対する比は0∼6.1であり, 広葉樹落葉については, 葉が大きく, 落下速度が遅い樹種ほど移動の速い傾向が認められた。以上より, 本調査地と似た条件の森林では, 経験的モデルと模型に対する各樹種の速度比を用いて, 落葉のおおよその移動距離が推定できると考えられた。この成果は, 渓流に対する落葉供給源の範囲を評価することに役立つと期待される。