市町村合併と共有林との関わりおよび共有林の展望・課題を明らかにする立場から, 一関市大東町の旧鳥海村地区を事例として取り上げ, 以前と現在の共有林の状況を概観し, 市町村合併に伴う展開の整理を行った。調査は, 聞き取り調査, アンケート調査および資料・文献調査によって行った。結果として, (1) かつて入会慣行が存在した共有林も経営的には低調であったこと, (2) 市町村合併に伴って186 haの林野が正式に地元地区の所有となったことを機に, 地区内の共有林の管理運営組織を一元化する方向付けがなされたこと, (3) (2) について地元住民の理解度は高く, 地域自ら林野の支え手となる意識がある一方, 他の主体との関わりを受け入れる意識が低く, また森林の公益的機能発揮に対する期待が高いこと等が明らかになった。共有林という地域資源の有効活用を図る上で, 森林のもつ多面的な機能に注目し, 他の主体との連携も視野に入れた幅広い視点からの利活用策の検討が重要な課題となろう。