スギ挿し木苗と実生苗の多雪地帯における造林初期の成育特性を比較した。互いに近距離に設定され,環境条件も類似している挿し木検定林と実生検定林の組合せを選択した。挿し木検定林には挿し木苗が,実生検定林には実生苗が植栽されている。選択された挿し木検定林と実生検定林の各組合せにおける同一系統の挿し木クローンと実生後代のデータをデータセットと定義し,三つのデータセットを用いて解析した。挿し木苗と実生苗の5年次生存率は同程度であったが,挿し木苗の10年次生存率は実生苗より明らかに低かった。枯死の原因の多くは,幹折れまたは根元折れであった。実生苗と比べ,挿し木苗の根元曲がりと樹高は小さかった。以上の結果から,挿し木苗は根元曲がりが少ないものの,成長にともなって多発する幹折れのために,生存率は低下することがわかった。挿し木苗の劣った樹高成長は,埋雪期間を長期化する。したがって,多雪地帯における挿し木造林は,雪圧による折損被害のため,生存個体数が少なくなる危険性が高いことが示された。