糞虫による糞の埋設を排除して糞の分解過程を測定するフンカゴ法を考案し,これによるニホンジカの糞の消失速度を,メッシュバッグ法(フンバッグ法),および糞虫の影響を排除しない従来法(糞粒カウント法)による糞の消失速度と比較した。フンカゴ法による消失速度は,糞粒カウント法とフンバッグ法の中間の値を示した。フンカゴ法に比べて,フンバッグ法では糞が摂食されないために消失速度が小さく,糞粒カウント法では糞が埋設されたために消失速度が大きかったものと推察された。分解過程における糞の炭素,窒素含有率はフンカゴ法およびフンバッグ法で有意な差は認められなかったことから,糞虫が微生物活動に及ぼす影響は小さいと考えられた。以上より,フンカゴ法は,糞粒カウント法やフンバッグ法を併用することで,糞虫による物理的な消失,および糞虫や微生物活動による分解を定量的に評価できることが示された。