サクラマス幼魚に対する渓畔林喪失の影響を明らかにするため,北海道北部の森林小流域と本流渓畔域が草地化された小流域において,生息場所変量とサクラマス生息密度などを比較した。調査は,夏,初冬,春の3季に,本流と支流の両方で行った。生息場所変量についてみると,特に,草地化流域の本流は最高水温が高く,倒流木カバーが少ない傾向がみられた。サクラマス生息密度も草地化流域の本流で低い傾向が認められた。重回帰分析の結果,夏は最高水温が,初冬は倒流木カバー量が,最もサクラマス生息密度に影響する変量であった。さらに当年魚では,産卵域となっている川幅の狭い支流や本流上流部に多い傾向も認められた。以上のように,渓畔林は,サクラマス生息に重要であり,開発の際は,渓岸付近を緩衝林帯として保全する必要がある。小さな支流も,産卵や稚魚の生息に重要であり,渓畔域を撹乱しないよう配慮が必要である。