積雪寒冷地のスギ不成績造林地の修復を目的に当地の極相種であるブナを植栽した林分において,下刈り期間を変えた試験区(10年間継続した部分を下刈り区,3年間で中止した部分を放置区とする)を設定し,処理の違いが植栽木と侵入した広葉樹の消長に与える影響を検討した。ブナは放置区では侵入木等によって庇陰されていたが,その死亡率は下刈り区より低かった。植栽後8年を経たブナの胸高直径,樹冠直径は下刈り区で大きく,樹高は放置区で大きかった。ブナの雪圧による被害率は下刈り区で高かった。侵入木についてみると下刈り区では萌芽力の小さいウダイカンバ,ダケカンバは試験期間中に消失したが,萌芽力の大きいウワミズザクラは下層で生存していた。放置区では植栽木に侵入木などが加わって林冠が閉鎖し,階層構造を形成していた。このような修復施業では,下刈り期間を短縮することで,植栽木と侵入広葉樹が混交する周辺の自然植生に近い森林を育成できると考えられた。