シベリアは世界最大の森林地帯であり, その森林の炭素収支の評価が急がれている。本研究ではシベリアの亜寒帯林を対象に, 炭素収支評価の重要なパラメータである葉面積指数 (leaf area index, LAI) を, 航空レーザー測距法を用いて広域的に推定する方法を提案した。対象域は中央シベリアを流れるエニセイ河流域で, その支流バクタ川沿いに設置した長さ200kmにわたるトランセクトの森林縦断プロフィールを航空レーザー測距法で計測した。このプロフィールの積分が森林蓄積やLAIとアロメトリー関係にあることを利用して現地実測調査により森林縦断プロフィールに対する蓄積とLAIの回帰を決め, これによりトランセクト全域のLAI分布を推定した。大まかな傾向として, 標高の低下に伴う気温の上昇と永久凍土上の活動層の肥厚を反映して, LAIは上流から下流へと増加しているほか, 地形による活動層の厚さに応じて局所的な変動がみられるなど, 永久凍土とその上の活動層が森林特性を大きく規定していることが明らかになった。本研究のトランセクトはわずか200kmでしかないが, より広範な航空レーザー測距を行えばその生育環境と併せたシベリアの森林の特性が明らかになり, 近い将来懸念される気候変動に対する反応の予測も可能となる。