本研究は, 日本とタイの児童にアンケート調査を行い, 家族関係における食事時間の役割を検討した。日本とタイはともにアジア圏に属するが, 社会環境や家族関係は異なる。これら2国を調査することで, 子どもにとって家族関係を構築するための食事時間が日本特有のものであるかを明らかにすることを試みた。 日本の場合, 家族全員で夕食を食べている子どもの方が食事中の会話が多く, 食事も楽しいと感じており, さらに家での食事時間を楽しいと感じている子どもの方がより親や家族を信頼していることが示された。 日本とタイを比較すると, 親を尊敬する気持ちや家族を信頼する気持ちはタイの子どもの方がずっと高かったが, タイでは家族関係と食事時間における日本のような関係は見いだせなかった。家族の相互理解のために果たす食事時間の役割は普遍化できるものではなく, 日本特有であることが示唆された。