本研究では, 現代の日本人の摂取脂質エネルギー量増加に伴う肥満に注目し, 脂肪肝を誘発させるオロチン酸 (OA) とブナシメジの添加がSprague-Dawley (SD) ラットの肝臓における脂質代謝に及ぼす影響について検討した。3週齢のSD系雄性ラットを購入し, 市販飼料で一週間予備飼育した後, (1) 15% cellulose powder (control), (2) 15% Bunashimeji powder (Buna), (3) 1% orotic acid and 15% cellulose powder (OA-control), および (4) 1% orotic acid and 15% Bunashimeji powder (OA-Buna) の4群に分け, 各々脂質代謝に関するプロフィールを測定した。その結果, controlとOA-contのセルロース添加群間で, 肝臓重量, 肝臓総脂質量ならびに肝臓TGにおいて顕著な差が認められた。また, controlとBunaならびにOA-controlとOA-Bunaの群間で肝臓重量に有意な差は認められなかったが, 肝臓総脂質量と肝臓TGは, ブナシメジ添加で有意な低下が認められた。そこで, ブナシメジ添加が脂質代謝酵素のmRNA発現に及ぼす影響について調べたところ, 脂肪酸合成に関与する酵素であるACC, 肝臓でのTG合成に関わるDGATの発現に有意な差が認められた。これにより, ブナシメジを摂取することで, 肝臓での脂肪酸合成を抑えると同時に, TG合成を妨げ, 肝臓脂肪蓄積を抑制させる機序が示唆された。これらの研究結果は, ブナシメジが肝臓の脂質代謝改善に資する優れた食品素材であることを示すものである。