我々の食生活に対する食品添加物の貢献は多大であり, 抗菌, 防腐, 酸化防止等の目的で多くの食品添加物が利用されている。食品添加物による食品の品質保持をより卓越したものにするためには, 摂取に対する安全性が十分に保証された上で, より長期にわたって機能を発揮できる安定な食品添加物を使用することが望まれる。 そこで我々は, 有用な食品保存剤の一つであるリゾチームをより機能的な新規食品添加物にするために, 両親媒性合成高分子化合物モノメトキシポリエチレングリコール (mPEG) を導入し, コンジュゲート (mPEG-リゾチーム) を創製した。mPEG-リゾチームにおいては, 結合したmPEGが酵素作用の妨げになる可能性を有していること, および食品添加物としての使用を計画していることから, 酵素活性面の性質を把握することは極めて重要である。これまでに, 熱力学的解析によりmPEGの導入がリゾチームを高度に安定化させることを報告していたが, mPEG-リゾチームの酵素活性上の安定性については未検討のままであった。 本研究では, mPEG-リゾチームが (i) 37℃の熱条件下では20時間後も酵素活性を完全に保持し, 80時間後も40%以上の活性を示したこと, および (ii) 90℃・30分の熱処理後も100%近い活性を保持し, 98℃においても約70%の活性を示したこと, を見出した。また, mPEG-リゾチームが一部の有機溶媒中でも酵素活性を示すことも明らかになった。以上のことから, mPEG-リゾチームについて, 我々の食生活を支える新しいタイプの食品添加物としての利用や食品製造への応用の可能性が高まったと示唆された。