食品の品質維持における食品添加物の貢献は多大であり, 抗菌, 防腐, 酸化防止等の目的で多くの食品添加物が利用されている。しかしながら, 新規の食品添加物の発見・開発は非常に困難であることから, 機能上の弱点を改善した新しいタイプの食品添加物を得る一つの手法として, 既存のタンパク質 (ペプチド) 性食品添加物と高分子化合物を結合させた「タンパク質コンジュゲート」の作製が注目されている。そこで, 我々は有用な防腐剤の一つであるリゾチームと両親媒性合成高分子化合物モノメトキシポリエチレングリコール (mPEG) とのコンジュゲートの作製を試みた結果, リゾチームの安定性が顕著に向上することを見出した。本論文では, この安定化がmPEGの導入によってリゾチームのfolded stateの自由エネルギーレベルが低下し, unfolded stateとの間の拡大したエネルギーギャップに起因することを熱力学的に明らかにした。mPEGによって高度に安定化された食品添加物は, 長期にわたって活性を発揮することが可能であると考えられ, これまでに無い新しいタイプの食品添加物としてその利用価値を高めると示唆された。