醸造業界で一般的に利用されている醸造用糸状菌のGAD活性とその特性について調べた。 18株の醸造用麹菌 (味囎用, 醤油用, 清酒用, 焼酎用) と紅麹菌2株を用いて, 液体培養で得られた菌体のGAD活性を比較したところ, 味噌用麹菌と清酒用麹菌が活性が高く, 比較すると同じA.oryzaeでも醤油麹菌の活性は低かった。紅麹菌2株のGAD活性は, この培養条件下ではいずれのA.oryzaeよりも低かった。〈P〉〈/P〉培養液中にはGAD活性は見られず, 麹菌GADは非遊離型であった。また, 基質と菌体のみの反応では活性はほとんど見られず, 補酵素ピリドキサールリン酸の添加により活性が見られたことから, 麹菌GADのほとんどは補酵素を伴わないアポ酵素の状態で菌体に存在すると考えられた。 液体培養では, 菌体の増殖に伴って菌体重量当たりのGAD活性も増加し, 培養3日目の菌体が最も活性が高く, 以降定常期には低下した。味囎用麹菌GADの至適pHは5.5, 至適温度は55℃ だった。培養菌体のGADは培養後低温静置条件下 (4.C) の保存時間に比例して顕著に活性化された。 味噌用や清酒用のA.oryzaeは, GAD活性が潜在的に高いことが明らかとなった。GADは血圧降下作用を有するγ-アミノ酪酸の生成酵素であり, 食品への機能性付与やγ-アミノ酪酸生産にこれらの醸造用糸状菌が利用できると考えられる。