酒類の製造は安全醸造のために低pHで発酵させることが行われている。焼酎においては焼酎麹菌が多量のクエン酸を分泌し, それでpHが下がるが, 発酵のためには焼酎麹菌の生産する糖質分解酵素が低pHにおいて安定に機能し, 発酵性糖類が十分に供給される必要がある。焼酎白麹菌Aspergillus kawachiiの生産するキシラナーゼは好酸性・耐酸性を有することが報告されているが, その分子メカニズムについては分かっていなかった。 筆者らによって白麹菌キシラナーゼの好酸性・耐酸性機構がX線結晶構造解析によって分子レベルで解析され, その機構が明らかにされた。本稿では, 白麹菌のキシラナーゼのうち最も好酸性・耐酸性のキシラナーゼCについて, その特異な性質の獲得機構について解説していただいた。今後, 同様な性質を持つ他の酵素についても解析され, さらに明らかになると期待される。