室温に放置したイワシ肉は1日目で弱い生ぐさ臭を生じ, 3から4日の放置で腐敗臭がしはじめ, 5日以後になると強烈な刺激臭のある腐敗臭となった。 この時の魚臭に関係する化学物質のうち, TMAおよびDMAは1日目から顕著に増加した。アルデヒド類の増加は3日目までは緩やかで, 4日目以降は急増した。揮発性含硫化合物では硫化水素とメチルメルカプタンは新鮮魚では認められず, ジメチルスルフィドは新鮮魚でも認められた。硫化水素とメチルメルカプタンは2日目以降から徐々に増加するのに対して, は1じめから存在するジメチルスルフィドはあまり変化しなかった。 揮発性酸の大部分は酢酸でこれは最初から存在しており, この量は2日目までほとんど変わらず, 増加し始めるのは3日以後であった。 このような系に酒, みりんあるいは米発酵調味液を加えて同じように室温に放置すると, 発酵液では2日目までは魚臭は感じられず, 生ぐさ臭と腐敗臭の発生の時期も2日程度遅れた。酒あるいはみりんでは大体1日程度魚臭の発生を抑えた。酒とみりんでもTMA, DMA, アルデヒド類, 硫化水素とメチルメルカプタンなど異臭に関係する化学物質の発生をある程度抑制したが, 発酵液ではこれらの物質の発生を顕著に抑制した。物質によるが40から80%の抑制効果が認められた。 発酵液およびそのモデルとしたエタノールと乳酸およびアミノ酸を合わせた混合液はともに細菌の生育を抑制した。