1. 麹エキス液体培地に, アルコール脱水麹を用いた培地を使用することにより, 酢酸イソアミル及びカプロン酸エチル高生産株を効率良く分離することができた。 2. 分離したエステル高生産株の中から, 協会9号酵母に比べて約2倍量のカプロン酸エチルを生産する株を選抜した。 3. カプロン酸エチル高生産株No.1-9株は, S.cerevisiae に属し, 協会7号酵母に近縁であるが, 2, 3の性質で協会7号酵母とは, 明らかに異なる性質を示したことから, 協会7号酵母の自然突然変異株と推察された。 4. No.1-9株の発酵速度の改良のため, 泡無し化を行った。 5. 泡無し変異株による吟醸酒小仕込試験の結果発酵経過は協会9号酵母とほぼ同様に推移し, カプロン酸エチルは約2倍生産された。有機酸の生産は, 協会9号酵母より低かった。製成酒の官能的評価も良好であり, 吟醸酒用酵母としての実用性が認められた。 なお, 本研究の一部は平成1年度日本醸友会仙台支部酒造技術研究発表会及び平成2年度日本醸造学会において発表した。