Aspergillus属, Rhizopus属を用いた味噌の熟成中および発酵大豆中の蛋自の変化をSDS-ポリアクリルアミド電気泳動法で比較検討した。 1.Asp., Rhi.区の無塩味噌 (エタノール5%添加) 熟成中のプロテアーゼ活性はエタノールによる失活が大であり, 特にRhi.区で著しかった。 2.Asp, を用いた食塩濃度4~12%の60日熟成味噌におけるpH3.0, 6.0の残存プロテアーゼ活性はそれぞれ80および90%以上であった。Rhi.を用いた場合の残存プロテアーゼ活性はそれぞれ70, 80%で, Asp.より低かった。 3.Rhi.を用いた味噌熟成中の蛋白溶解率, 分解率はAsp.のそれより低く, 特に分解率は食塩の増加とともに著しく低下した。 4.Asp.区の味噌中では分子量約4万以上の蛋白のパンドが熟成30日目でほとんど消失し, 分子量1万付近のバンドは熟成10日目以降徐々に薄くなる傾向にあった。 5.Rhi.区の味噌では分子量約4万以上のバンドが熟成60日目でも存在し, 1万付近にもAsp.区より長期間濃厚なバンドが認められた。 6.Asp.属を蒸煮大豆に生育させると分子量5~7万付近のバンドがほぼ完全に消失し, 1万付近のバンドが増加した。 7.Rhi.属を蒸煮大豆に生育させたものは分子量約2万以上のバンドはほとんど変化がなく, 1万付近のバンドが僅かに濃厚になった。 8.Asp.属とRhi.属による大豆蛋白の分解作用はAsp.属ではより低分子に分解したのに対しRhi・属による分解程度は低く, ほとんど中高分子のままであった。これはAsp., Rhi.属のプロテアー・ゼ活性の食塩アルコールによる失活程度およびペプチダーゼ活性の差異によるものと推測した。終わりに, RhizoPu3属菌株の分与並びに培養方法について御助言を頂いた伊藤寛東京農業大学教授 (前農林水産省食品総合研究所微生物利用第一研究室長) に深謝致します。