1. 吟醸もろみの発酵中における香気成分の動向を検討するために, 総米750kgの吟醸仕込みのもろみについて, 仕込直後からアルコール添加までの25日間経日的に試料を採取し, 香気成分をガスクロマトグラフを用いて分析した。 2. 高級アルコール類は一部の成分を除きもろみ前期で急増し, 後期で漸増する傾向を示し, 全期を通じて生成が続いている。一方その酢酸エステル類は高泡から落泡の時期にかけて最大となり, 以後そのまま含量を保つものと微かに減少するものが認められた。 脂肪酸のエチルエステル類はもろみの発酵の最盛期に最大となり, その後漸減するがもろみの末期に再び微増することが認められた. また, ロイシン酸エチル, 乳酸エチルはもろみがある程度経過してから増加し, 全期間漸増するパターンを示した。一方, こはく酸ジエチルはもろみ前期で急増し, 末期になるにつれて減少している。 終りにあたり, 本研究にご協力下さった西牟田茂太氏および秋田県内の酒造場に深謝するとともに, ご教導とこ校閲を賜った吉澤淑博士 (国税庁醸造試験所) に深く御礼申し上げます。