本格焼酎醸造における脂肪酸の動向を原料処理および製麹工程について調べた。 1.浸潰・蒸きょう工程では遊離型の脂肪酸が減少したが, 焼酎用原料の破砕精米の場合は上記工程で脂肪酸の不飽和度はほとんど変化しなかった。 2.製麹工程では原料米あたり約20%の脂肪酸が生成された。 生成される脂肪酸区分は脂質構成型の脂肪酸 (LFA) であり, 遊離型の脂肪酸 (FFA) はむしろ減少した。すなわち, 麹菌による新らたな合成と遊離型脂肪酸の取り込みによりLFA区分の脂肪酸が増加した。 3.製麹条件と脂肪酸の生成との関係を調べた結果, (i) 製麹40時間までは脂肪酸が生成され, 以後減少した。(ii) 品温経過は製麹後期を高温で経過したものは脂肪酸の生成が少なかった。(iii) 相対湿度が93%以下の環境で製麹した場合, 麹菌の増殖もわるいが, 脂肪酸の生成が少なかった。(iv) 蒸米の吸水率が35%のとき脂肪酸の生成が最も多く, 吸水率が35%より低いものでは高いものより脂肪酸の生成は少なかった。