ブドウおよびブドウ酒に関係のある酵母19株を用いて, SO2添加あるいは無添加の甲州種ブドウ果汁を発酵させ, 生成するアセトアルデヒド (AcH), ピルピン酸 (PA), およびα-ケトグルタール酸 (α-KG) 量を測定すると共に, これらの成分にもとつくSO2結合能について検討した。野生酵母には100ppmのSO2によって強く抑制されるものが多いが, 特に C. krusei および P. membrauaefacins はSO2を添加するときわめて少量のAcH, PAおよびα-KGしか作らなくなる。しかし, 鞘酵中にSO2生成能を示すのもこの2株である。この2株を除く他の酵母ではSO2添加の方が無添加よりも多量のAcH. PA, α-KGを生成する。特にブドウ酒酵母にこの傾向が強い。これらの成分の生成レベルは酵母株によって特徴的パターンを示し, これによって供試酵母を6つのタイプに分類することができる。特に S. xhemlieri, K. apitulata はPAの, S. fermentati, S. bayanus S-73はα-KGの, また Sch. pombe はPAおよびα-KGの生成量が著しく多い点で特異である。ブドウ酒酵母はAcH≧ α-KG>PA型か, あるいはα-KG>AcH≧PA型のいずれかに属するが, SO2無添加では例外なく後者の型となる。得られた酵母別ブドウ酒にSO2を加えて結合態SO2を生成させてみると, AcH, PAおよびα-KG量から計算したSO2結合容量と, 実測された結合SO黛量とは, ほとんどの場合よく一致し, ブドウ酒のSO2結合能は, これら3種の成分を主体とするものであることを示唆している。また, 加熱殺菌果汁を用いる発酵試験では, 未殺菌の生果汁を用いる実験系よりも, これら3成分の生成量が一般に大きくなることを認めた。