異常吸水蒸し米を使用した醪の異常発酵経過の原因と, 異常吸水米の成因をあきらかにする目的で試験した。 (1) 異常吸水蒸し米は, 正常なものに比べて被糖化性が劣り, 殊に腹部の崩壊の著しい米粒が多く観察された。 (2) 異常吸水蒸し米は, 仕込まれた場合, 細胞内における膜系が組織から早期に遊離する可能性を予測し, 米エキスを用いて酵母におよぼす影響を試験した結果, その濃度に比例して生育が促進されたが, 死滅したものが多く, 細胞質を噴出する現象が観察された。 (3) 異常吸水蒸し米を使用した醪の示す異常経過の主要な原因は, 醪初期におこる米粒腹部の膜系の過溶解および糖化性の不良に起因する酵母の異常生育による結果であると推定した。 (4) 高温と適温条件下で稔実した米粒について発芽性, 水分, 粗脂肪およびヌカリパーゼの力価を指標として温度に対して示す生理的な反応を比較検討した。前者は後者に比べて変動が大きく, 米質を吟味する上で品種よりはむしろ登熟期の温度を重視すべきであるという示唆が与えられた。