以上の実験及び考察を要約すると, 1. 清酒酵母 (協会6, 7号) 菌体の収得量は合成培地よりも麹エキスの方が大であり, 麹エキスでも精米歩合の大なる米麹が小なるものより大である。 2. 6, 7号両酵母間には灰分量及びその組成比の差は全然認められない。 3. 酵母菌体灰分の組成は, 麹エキス原料米の精米歩合によつても多少支配され, 低精白の場合は高精白よりPが少くK, Na, Mgがやや多い傾向にある。Kの豊富な培地でも酵母のNa摂取量がかなり多く, 殊に合成培地のものは麹エキス培地のものよりNaが大であることが注目される。 4. 清酒酵母が他の酵母に比して多くのNaイオンを含むのが特異的であり, これは培地のKの不足による代替として利用するのでなく, 清酒酵母特有の性質と考えられる。 5. 麹エキスに培養した清酒酵母の菌体灰分組成より清酒酵母用無機塩モデル培地 (M培地) を調製した。 6. M培地は既往の培地に比して, 酵母増殖率で一般に優れている。 7. M培地は無機塩の種類とその組合せにより増殖率に若千の優劣が見られるが, 次の組成のものが最良であつた。 K2HPO436.02%, NaH2PO4 29.96%, MgSO427.71%, CaCl2 6.31%終りに臨み本実験の一部を担当された当所佐藤淳技師に厚く御礼申上げます。又本報告の一部は1959年11月大阪醸造学会第9回講演会において発表した。