工業用酒精を用いた酒類密造になる犯則物件の分析取扱いに関しては, 一般にはメタノールの定量を行つてきたが, 法廷の挙証としては単一成分の決定のみでは不充分なために当室では近来Rirnini法及びVani簸o法によるHCHOの検出をも併せ行つてきた。工業用酒精の変性標準によれば, 一般変性にはメタノール変性とベンゾール変性とがあるが提出される物件についてもその両方が存在している様である。しかし両変性とも酒精180 l 中30 g 以上のフォルマリンをも同時に混和すべき事になつている (HCHO 6.7mg%) から, 変性酒精の判定にはHCHOの定量も便益である事になる。そこで筆者等は酒精溶液中の HCHOの適当な定量法について検討してきた。 HCHOの定量法としては, ロダンアンモン等を用いる法とか, メチルバイオレットを用いてシップの試薬と同じようにして発色剤を作つてやる法及びシツフの試薬による法等をあげる事ができるが, Bricker等によつて行われた本法は他の夾雑物によつて影響される事が少く, 定量の範囲が丁度変性の際のHCHOの濃度に相当している事とその濃度範囲程度に於てはBeerの法則に正確に従う等の点で大変勝れていると思われるので以下標準液についての筆者等の実験結果について報告する事にする。